写真:外観
梅屋敷眼科クリニック

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【診察項目】白内障・緑内障検診/網膜硝子体疾患/眼科一般疾患

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緑内障

1.緑内障とは

 眼球の内部には房水という透明な水が循環しており、眼球内に栄養を与えています。房水は虹彩の裏にある毛様体突起から産出され、虹彩と角膜の間の隅角にある線維柱帯から排泄されます。この眼内の房水の圧を『眼圧』といいます。眼圧により視神経の付け根である視神経乳頭が圧迫されて視神経がへこみ(陥凹)視神経を走行する網膜の神経線維がダメージを受けて、その線維に相当する部分の視野が欠損する病態を緑内障といいます。

 眼圧の正常値は10~21mmHgといわれていますが、緑内障の患者様は必ずしも眼圧が高い訳ではありません。日本人の場合、眼圧が正常値でも視野欠損を生じる『正常眼圧緑内障』の方が約80%を占めています。

 では何故、眼圧が正常なのに緑内障を発症するのでしょうか。眼圧が正常であっても、視神経の支持組織が眼圧に負けて弱くなるために、乳頭陥凹を生じて緑内障を発症するためです。

緑内障
写真:左眼)正常眼底 視神経乳頭と黄斑部

左眼)正常眼底

写真:左眼)正常視野

左眼)正常視野

2.緑内障の分類

 緑内障は開放隅角緑内障と狭隅角緑内障の2種類に大きく分類されます。開放隅角緑内障には正常眼圧緑内障も含まれます。隅角の角度が広いにも関わらず、線維柱帯の房水の排出効率が悪く眼圧が上昇したり、視神経乳頭の支持組織が弱いために緑内障を来す病態を開放隅角緑内障といいます。一方、眼軸という眼球の全長が短かったり、進行して膨化した白内障により隅角が狭くなったために発症する緑内障を狭隅角緑内障といいます。狭隅角緑内障では急激に眼圧が上昇する急性緑内障発作を発症する場合があります。
 また眼圧が上昇する原因によって緑内障はさらに細かく分類されます。


3.緑内障の病態

① 前房水と眼圧

 眼球の中には、房水という透明な液体が入っています。この房水は眼球内の組織に栄養を与え、また光の通り道としての透明性を確保しています。前房水は眼球内に留まっている訳ではなく、常に新しい房水と入れ替わっています。房水は虹彩の裏側にある毛様体から分泌され、虹彩と角膜の間の隅角にある線維柱帯から排出され血液内に吸収されます。この房水の生産量と排出量のバランスで眼内の水の量が決まってきます。眼球の中は閉鎖された空間なので、房水の量が多くなったり少なくなったりすると、眼球の硬さ、すなわち眼圧が変化します。眼球内の前房水量は一定に保たれており、日本人の平均眼圧は15mmHgです。
 また正常範囲は10~21mmHgといわれています。

② 眼圧と緑内障

 緑内障とは隅角からの房水の排出が障害され、房水の生産と排出のバランスが崩れる状態のことです。毛様体では房水が常に生産されているので、隅角で房水の排出が障害されると、眼内に房水が貯留して眼圧が上がってしまいます。
 また緑内障の眼圧が上がると何故いけないのでしょうか。眼球内の一番奥には、カメラで言うフィルムの役割をしている網膜があります。この網膜には視細胞が膜状に並んでおり、この視細胞から神経繊維が繋がりそれが束になって視神経を構成し脳とつながっています。この視神経が、眼球から出ていく部分を視神経乳頭といいます。この視神経乳頭で神経線維が障害され視野が欠損する状態を『緑内障』といいます。
 眼圧が上がった状態(高眼圧)が続いたり、加齢性の変化で視神経乳頭の支持組織が脆弱化すると眼圧で視神経乳頭が圧迫されます。このような状態を視神経乳頭陥凹拡大といいます。視神経乳頭陥凹拡大が進行すると神経線維がダメージを受けるため視野が欠損してしまいます。1度、ダメージを受けた神経線維はどんなに治療をしても回復することはありません。

4.緑内障の症状

 緑内障の初期症状として最も多くみられるのが『目の疲れ』すなわち『眼精疲労』です。初期の緑内障では自覚的に視野欠損を感じることはありません。逆にかなり末期の緑内障にならなければ視野欠損や視力低下などの自覚症状は殆どありません。そのため早期の詳しい検査や的確な治療が必要となります。


5.緑内障に対する眼科的検査

 緑内障の有無を調べる眼科的検査としては視力検査、眼圧検査、眼科医による診察、光干渉断層撮影(以下、OCT)による視神経乳頭および網膜厚検査、精密視野検査があります。全ての患者様に視野検査が必要な訳ではなく、緑内障を発症している可能性がある場合に視野検査を行います。以上の眼科的諸検査と眼圧の数値を統合して治療方針を決定します。

 また視野検査が正常な場合でも眼圧が正常値を超えており、視神経乳頭陥凹が強く、将来的に緑内障を発症する可能性がある場合には、予防的に点眼薬を使用する場合があります。
 緑内障の定期的な診療としては1ヶ月おきに定期的な眼圧測定、眼科的診察を行うことが望ましいです。
 視野検査およびOCTによる乳頭解析は、その患者様の病状に合わせて3ヶ月から1年おきに施行します。

初期緑内障
左眼)乳頭OCT所見

赤色の部分の網膜がダメージを受けて
緑内障を発症している視神経線維層欠損です

初期緑内障
左眼)視野

写真:末期緑内障 右眼)眼底

末期緑内障
右眼)眼底

写真:末期緑内障 右眼)視野

末期緑内障
右眼)視野

写真:末期緑内障 左眼)眼底

末期緑内障
左眼)眼底

写真:末期緑内障 左眼)視野

末期緑内障
左眼)視野

6.緑内障に対する治療

 緑内障に対する治療は緑内障の分類により異なります。開放隅角緑内障に対する主な治療は眼圧降下剤の点眼です。この20年間で眼圧降下剤の種類が増えて、治療効果も大きくなってきたため、現在は殆どの患者様が点眼薬のみでの治療が可能になり、以前と比較して手術が必要な症例は非常に少なくなりました。

 しかし眼圧降下剤点眼の使用により眼圧が下がらなかったり、眼圧が正常でも視野欠損が進行する場合には手術による加療が必要になります。

 狭隅角緑内障に対する主な治療は眼圧降下剤の使用、レーザー光線により虹彩に房水の通り道を開ける虹彩光凝固術および白内障手術です。虹彩光凝固術は術後、10年ほど経過すると角膜を透明に維持する細胞である角膜内皮が減少し、水疱性角膜症を発症する場合があり角膜内皮移植が必要となります。そのため現在は白内障手術が主な治療法として選択されています。