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梅屋敷眼科クリニック

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【診察項目】白内障・緑内障検診/網膜硝子体疾患/眼科一般疾患

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糖尿病網膜症

1.糖尿病網膜症の病態

糖尿病網膜症の病態

 糖尿病網膜症とは糖尿病が原因により網膜の血管が閉塞して循環障害を起こし、網膜や硝子体などに様々な障害を生じて視力低下を招く状態をいいます。

 網膜の毛細血管が閉塞することにより、網膜の神経細胞が酸欠状態に陥り無血管野という血液の循環しない部分を網膜に生じます。その結果、眼球内で酸素を補給しようという作用が働き、網膜上に新生血管という非常にもろい血管が出現します。新生血管はとても破れやすいため、そこから血液が漏れ出したり血液内の蛋白質が網膜に漏出し蓄積していきます。新生血管から眼球内に大量の出血を生じる状態を硝子体出血といいます。少量の硝子体出血であれば時間とともに吸収されますが、多量の硝子体出血を生じて1ヶ月以上、吸収されない場合や少量の硝子体出血でも繰り返し出血を生じ、長期間に渡って眼球内に硝子体出血が存在している状態が続くと増殖膜という悪い膜を生じてきます。増殖膜が悪化すると牽引性網膜剥離を生じ硝子体手術が必要となります。

 網膜上の新生血管に対し治療を行わず放置すると、房水の排出口である線維柱帯まで新生血管が入り込みます。その結果、線維柱帯から房水の排出ができなくなり眼圧が上昇する、血管新生緑内障という治療に抵抗性の悪性度の高い緑内障を発症します。この状態になってしまうと、最終的に失明に至る可能性が高くなります。

 網膜は眼球の奥にあり、眼科的な診察を行わないと外から眼底の状態を見ることはできません。また糖尿病網膜症を発生しても初期には全く症状は無く、かなり進行して硝子体出血などを生じなければ視力低下などの自覚症状は出現しません。そのため糖尿病網膜症を発症しても自分では気付かずに放置し、病状がかなり進行して自覚症状が現れてから眼科を受診し、治療が手遅れになって失明に至る患者様が多くみられます。

 また糖尿病に罹患したからといって直ぐに糖尿病網膜症を発症する訳ではありません。血糖値が極端に悪い症例では数年で発症する場合もありますが、糖尿病になってから平均的には7〜8年後に糖尿病網膜症を発症する場合が多くみられます。


2.糖尿病網膜症の重症度分類

 糖尿病網膜症の進行度は単純、前増殖、増殖の3段階に分類されます。初めのうちは軽い網膜症であっても血糖値などの影響によりも徐々に進行し重症度を増していきます。

① 単純糖尿病網膜症

 単純糖尿病網膜症は眼底に網膜出血や蛋白質の漏出である硬性白斑が多少、見られる時期で、眼科的には特に治療は行わず定期的に経過観察を行います。この出血は糖尿病の治療により消退する場合もあります。


② 前増殖糖尿病網膜症

 病期が進行して前増殖糖尿病網膜症に移行すると網膜出血の数や量が増え、出血以外に網膜の浮腫や視細胞の障害により出現する軟性白斑が見られるようになります。この状態を放置すると更に病状が悪化してしまうため、場合によっては網膜光凝固術というレーザー治療が必要になります。


③ 増殖糖尿病網膜症

 前増殖糖尿病網膜症が更に進行すると網膜上に血管や白斑に加え無血管野および新生血管が発生する増殖糖尿病網膜症という状態に移行します。無血管野が広範囲に見られる場合には眼内の酸素需要量を減少させる目的で、網膜の視細胞をレーザーで焼いてしまう網膜光凝固という治療が必要となります。網膜光凝固には部分的に施行する局所の場合と黄斑部以外の網膜全体に光凝固を施行する汎網膜光凝固という2通りの方法があります。適切な時期に網膜光凝固を施行しないと、病態で説明したように新生血管が破けて眼内の硝子体腔内に出血を生じる硝子体出血を発症します。硝子体出血が長期間、眼内に貯留したり、少量でも繰り返し硝子体出血を発症すると網膜上に増殖膜の形成が見られます。1ヶ月以上、硝子体出血が消退しない場合や増殖膜が悪化し、牽引性網膜剥離を発症した場合には硝子体手術という眼科領域では最も大きな手術が必要になります。網膜上の新生血管に対し治療を行わず放置すると、房水の排出口である線維柱帯まで新生血管が入り込み、治療に抵抗性が高い難治性の緑内障である血管新生緑内障を発症します。
 この状態になってしまうと、最終的に失明に至る可能性が高くなります。


3.糖尿病網膜症に対する治療法

① 血糖コントロール

 糖尿病網膜症の治療では血糖の正常化が最も大事です。急激な血糖値の変化は糖尿病網膜症を悪化させるため、糖尿病専門の内科医による病状に合わせた血糖コントロールが必要となります。血糖値が高ければ糖尿病網膜症発症の危険性は高くなりますが、血糖値が低いからといって必ずしも糖尿病網膜症が発症しない訳ではありません。糖尿病網膜症の発症は糖尿病の罹患期間に大きく左右されるのです。


② 内服治療(飲み薬)

 病状が前増殖糖尿病網膜症以降に進行した場合には網膜循環の改善、止血目的にて血管強化剤、循環改善剤の内服治療を行います。網膜症の進行が強ければバイアスピリンなどの抗凝固剤の内服も追加します。

③ 網膜光凝固術

 網膜光凝固には部分的に施行する局所網膜光凝固と黄斑部以外の網膜全体に光凝固を施行する汎網膜光凝固という2通りの方法があります。
 前増殖糖尿病網膜症以降で無血管野が見られる場合には、眼内の酸素需要量を減少させる目的で網膜の視細胞をレーザー光で焼却してしまう網膜光凝固という治療が必要となります。無血管野が狭い場合には部分的に光凝固を施行する局所網膜光凝固を行います。無血管野が広範囲に見られる場合には汎網膜光凝固を施行します。 
 出血が僅かでも黄斑部近傍で漏出した蛋白質や血液により視力が低下する糖尿病黄斑症がみられる場合には、部分的に網膜光凝固を施行する場合があります。
 網膜光凝固による治療では入院は必要なく外来通院で行うことができます。局所であれば1回の照射による治療ですみますが、汎網膜光凝固を施行する場合は2回以上に分けて治療を行います。また病状によって光凝固施行後、何回も網膜光凝固を施行する必要があります。網膜光凝固は糖尿病網膜症の最も基本となる最も効果的な治療法です。 
ここで重要な点は光凝固を施行しても視力が改善する症例は殆ど無いということです。視力が1.2でも病状によっては汎網膜光凝固を施行する患者様も多くみられます。光凝固後、特に汎網膜光凝固を施行した場合には視野の狭窄や全体的な暗さを自覚し、視力的には逆に低下したように感じる方が多くみられます。
 すなわち網膜光凝固は視力を改善するためではなく、失明を予防するために施行する治療方法なのです。
 そのため網膜光凝固を施行する場合には、現在の病状、治療の目的、合併症について充分に説明を受け患者様とその家族の方がその必要性について理解した上で治療を受ける必要があります。
 網膜光凝固の治療費は局所の場合で片眼につき約10万円×保険負担割合、汎網膜光凝固の場合は片眼につき約16万円×保険負担割合の費用が初回に掛かる高額な治療です。初回後、凝固を追加した場合、暫くの期間は追加の費用はかかりません。


④ 硝子体手術

 硝子体手術は眼内の硝子体というゼリー状の組織を切除し、必要であれば増殖膜処理、網膜に対する処置、そして眼内プローブで網膜光凝固を行う治療です。大きな問題が無ければ手術終了時には眼内を清潔な灌流液で置換しますが、術前に網膜剥離を生じている症例や、術後、再出血する可能性が高い症例では、手術終了時、眼内に空気や膨張性ガス、シリコンオイルなどを注入する必要があります。このような充填物を注入した場合には、術後、ベッド上で腹臥位(うつ伏せの状態)で数日間、過ごす必要があります。
 以前、硝子体手術では結膜を切開しメスで強膜に眼内への器械の入口を作成して手術を執刀していました。
そのため手術終了後は縫合糸で強膜及び結膜を縫合する必要がありました。現在は硝子体手術装置が進歩したため、手術終了時に強膜や結膜を縫合するが必要ない無縫合硝子体手術が主流になっています。無縫合手術では手術時間が短縮され、眼球に対する侵襲が軽減されるため、以前の硝子体手術と比較して、術後、速やかな視力改善が期待できるようになりました。
 硝子体手術の手術時間は術前の状態により左右されます。手術時間は早ければ1時間程度で済みますが、重傷の症例では長い場合には4、5時間を要することもあります。
 糖尿病の患者様は白内障を合併している方が多いので、硝子体手術施行時に白内障手術も同時に行う場合が殆どです。
クリニックなどでは硝子体手術を日帰りで行っている施設もあります。しかし手術終了時に前述したようなガスなどの眼内に充填物を注入した場合には腹臥位を維持する必要性がありますので、入院での治療が望ましいと考えられます。

⑤ 抗血管内皮促進因子(VEGF)抗体の硝子体注射

 網膜光凝固よる治療後、長期間に渡って黄斑浮腫が見られる場合、その後、黄斑変性を来たし視力予後が不良となる症例が多く見られます。このような状態を改善するため、新生血管の発生の原因となる血管内皮促進因子(VEGF)を抑制する抗VEGF抗体を硝子体腔内に注射する手術が行われるようになりました。
 元々、抗VEGF抗体硝子体注射は加齢黄斑変性症の患者様に対し施行されていましたが、数年前より糖尿病網膜症の患者様にも使用の適応が拡大されました。
 手術時間は5分程度で終了し、早ければ手術後、翌日には黄斑浮腫が消退している場合もあります。
 しかし抗VEGF抗体の効果は長期間、継続しないため数回、硝子体注射が必要になる場合が多いです。
 新しい薬剤のため手術費用が約15万円×保険負担割合とかなり高額な治療になります。


4.早期発見・早期治療の重要性

 眼科治療技術が目覚ましく発展した現在でも、失明原因の第1位はこの糖尿病網膜症です。(第2位は緑内障、第3位は加齢性黄斑変性症)これは、病状が進行してから眼科を受診する糖尿病網膜症の患者様が多いことが原因と考えられます。糖尿病の患者様は糖尿病網膜症について知っていても、初期の網膜症では全く視力に影響がなく、自覚症状が乏しいため、あまり積極的に眼科的受診をしません。そのため受診した時には糖尿病網膜症がかなり進行して治療が手遅れになっている症例が多いのです。

 自覚症状が出始める前増殖糖尿病網膜症以降では、網膜光凝固術を施行しても視力予後が不良になってしまう場合が多いので、定期的な眼科的な検査と適切な時期の治療が重要です。そのためにも糖尿病と診断された場合には、眼科的な自覚症状が無くても定期的に眼底検査を受け、早期に発見し早期に治療を受けることが視力予後にとって大切なポイントになります。


5.糖尿病網膜症以外の糖尿病眼合併症

 糖尿病網膜症以外の糖尿病眼合併症としては糖尿病白内障、血管新生緑内障、糖尿病性角膜障害、糖尿病虹彩炎、一過性の眼筋麻痺による眼球運動障害などがあります。 

 糖尿病白内障は比較的、若い年齢から発症し加齢性の白内障に比べて進行が早いため、50〜60歳で手術の適応となる患者様が多くみられます。

 初診時に血管新生緑内障緑内障や糖尿病虹彩炎を発症している症例では、糖尿病網膜症がかなり進行していて、殆どの方で早期の網膜光凝固による加療が必要となります。 

 これらの眼合併症は網膜症の治療方法とは異なり、点眼薬や内服薬で治療することが多い疾患ですが、網膜症と同様に早期発見および早期治療が重要となります。